第29回 西郷蘇生の家

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西郷蘇生の家

西郷隆盛は、その人生において二度ほど死にかけている。007の映画風にいえば「三度死ぬ」というやつ。一度目のそれが、ちょうどこの茅葺の復元された家の前に広がる錦江湾においてだった。幕府による追及から免れてきた月照という勤王僧といっしょに入水自殺を図った。月照は帰らぬ人となったが、西郷はこの家で蘇生したという。つまり、この家で西郷が息を吹き返し回復しなければ、その後の歴史が変わっていた可能性もあるということだ。そういった意味もあり、この住居は復元までされて大切にされているが、現在は交通量の多い国道が目の前に通っていて、そして駐車場がなく、立ち寄るには徒歩が適しているが、市街地からはべらぼうに遠いというお世辞にも行きやすい場所ではない(浜地さんありがとうございます)。それもそのはず、西郷が蘇生した当時は道もなく、人の行き来もほとんどなく、この地域の人々は舟を利用して移動していた場所。行きにくさはその名残ともいえる。蘇生したのには西郷自身の運や体力もあったであろうが、回復に関しては、眼前の錦江湾越の桜島という風光明媚なこの場所の良さもあったのではないだろうか。車で通る時は脇見注意、電車の車窓から見るときは一瞬を逃さぬようご覧いただきたい名所である。

 

文・東川隆太郎  スケッチ・浜地克徳