第32回 国道10号の崖紀行

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国道10号の崖紀行
自然とスピードの出る国道10号沿い。崖は波打つように南北に連なるが、よそ見ができないひとには素通りの道。ましては崖の反対側は海と火山。崖をしげしげと眺めるには意識することも必要か。といっても崖は目の前にいつもある。今日も昨日も100年前も。ただ3万年前となると少し事情が違う。反対側の海はまさに火口であり、大量の噴出物が南九州はもちろん日本中まで影響を及ぼした。崖は、その一連の破局的噴火を眺望していたというより正面から受け止め形状の変化を余儀なくされた。その後、大雨に合うごとに削られて今に至っている。平行して走る線路や電柱、国道は、あまり過去の出来事を知らなさそうだ。崖に若葉が茂る5月の頃、青い空と緑の崖と青い海が程よく重なり、はっきりと夏が近いことを教えてくれる景色が広がる。
そういえば、今から20年くらい前、ひょんなことから崖横の国道と海のわずかな間でコンロを持参して焼きそばを焼き食したことがある。国道を行き交う車がまき散らした火山灰が、焼きそばに混入されたのであろう。こしょうを調理に使用していないのも関わらず、黒いつぶが茶色の麺を覆っていた。その時も崖は濃い緑をしていた。
 
文・東川隆太郎  スケッチ・浜地克徳