第34回 慈眼寺跡

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慈眼寺跡
 私にとって慈眼寺といえば食べ物が思い浮かぶ。まずは、そうめん流し。鹿児島のそうめん流しは、流水によって手元の円卓の中をそうめんがぐるぐる回転するタイプのものが一般的だが、慈眼寺公園のそうめん流しの装置は少々異なる。噴流型といって、円卓の中央部からそうめんが水とともに湧き出すのである。湧き出したそうめんは、水とともにさらに回転して私たちの箸にすくわれていく。これは桜島の噴火を表現したといわれているが、そのオリジナル感が実に痛快だ。次は鹿児島スイーツの代表のひとつであるぢゃんぼ餅。ぢゃんぼ餅と聞けば、磯を思い出すひとも多いと思うが、実はルーツは谷山。慈眼寺ではないものの谷山がルーツだけに歴史は深い。磯のもおいしいが慈眼寺のもおいしい。
あ、食の話題ばかりで肝心の寺は置いてけぼりになってしまった。廃寺になったとはいえ、慈眼寺の遺構は趣のあるものばかりだ。歴代住職の墓や仁王像、石橋にミニ渓谷とどこも絵になるものばかり。かつての荘厳さを思い浮かべながら、自然を愛でながら、どこを切り取ってもベストと思えるところが慈眼寺の最大の魅力だろう…と言いつつ、やっぱりそこにそうめん流しとぢゃんぼ餅はあってほしい。
 
文・東川隆太郎  スケッチ・浜地克徳