第35回 南泉院跡

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慈眼寺跡
 江戸時代、天台宗の寺院としては薩摩藩内最大の規模を誇っていた南泉院だが、今この地には住職墓がひっそりと佇んでいる。南泉院は現在の東京にある徳川家の菩提寺・寛永寺の末寺。そのため境内には、徳川家康を筆頭として歴代将軍の位牌を安置した東照宮もあった。元々は現在の照国神社の位置にあったが、幕末期に薩摩藩と幕府の関係悪化に伴い移設・縮小が繰り返され、まずは常盤の千眼寺近くに、さらに明治2年の廃仏毀釈を経て、現在の場所に住職墓が移設されることになった。移設された小野は数多くの石工を輩出した地域。住職墓背後の山には石工が好んで利用した溶結凝灰岩を確認することができる。今や訪れる人々は決して多くはない印象を受けるが、墓と竹林の佇まいの良さと整然と並ぶ墓の数々に、かつての威厳を感じさせられる。
 
文・東川隆太郎  スケッチ・浜地克徳